腸内細菌がいなくなると睡眠パターンが乱れる【日本の研究.com】

腸内細菌がいなくなると睡眠パターンが乱れる【日本の研究.com】


【プレスリリース】腸内細菌がいなくなると睡眠パターンが乱れる
2020年11月11日
https://research-er.jp/articles/view/94043

>腸内細菌叢を含む腸内環境は、脳機能と相互に影響を及ぼしあっていることが明らかになっています。本研究では、慢性的な抗生物質投与によって腸内細菌叢を除去したマウスを用いて、腸内細菌叢と、脳機能の一つである睡眠の関係について調べました。

>脳波と筋電図を指標として睡眠を解析すると、腸内細菌叢除去マウスでは、明期(睡眠期)の睡眠が減り、暗期(活動期)の睡眠が増えており、睡眠・覚醒の昼夜のメリハリが弱まっていました。また、大脳皮質の活動が活発なレム睡眠に特徴的な脳波成分であるシータ波が減少していることが分かりました。以上のことから、腸内細菌叢の除去が睡眠の質を低下させる可能性が示唆されました。
>今後、腸内細菌叢から睡眠制御の仕組みへの情報伝達経路の解明や睡眠不足状態の解析を通じて、腸内環境と睡眠との相互作用を明らかにし、食を通じた腸内環境コントロールによる睡眠改善法の開発を目指します。本研究の推進により、腸内環境と脳機能との相互作用(脳腸相関)についての理解をさらに深めることで、食習慣に基づいた健康増進の新たな方法論の確立が期待されます。

>私たちは食事と睡眠を毎日とります。食事の選び方やタイミングは腸内に生息する細菌叢のバランスや日内変動を変化させ、腸内環境に大きな影響を与えることが分かっています。また腸内環境と脳機能は相互に作用しあっていることが明らかにされています。この関係は脳腸相関と呼ばれ、心身の健康維持において重要な役割を担っているとして、近年、注目を集めています。睡眠も脳機能の一つであり、腸内環境からの影響を受けている可能性が考えられます。そこで、本研究では、腸内環境の重要な要素である腸内細菌叢が睡眠に及ぼす影響について調査しました。

>続いて、脳波・筋電図を計測して睡眠・覚醒状態を解析したところ、腸内細菌叢除去マウスでは、正常なマウスと比較して日中(マウスの睡眠期)のノンレム睡眠注2)が減少し、逆に夜間(マウスの活動期)にはノンレム睡眠とレム睡眠注3)の増加が認められました。これは、24時間の活動リズムは維持されているものの、本来、睡眠を取る時間帯に活動が増え、逆に活動が盛んな時間帯に睡眠をとっており、昼夜のメリハリが弱まっていることを示しています。また、レム睡眠は、一回の持続時間は変わりませんが、出現頻度が増加し、ノンレム睡眠とレム睡眠の切り替わりがより多く生じていました。脳波波形を詳しく分析してみると、覚醒中とノンレム睡眠中の脳波スペクトルには、正常なマウスと腸内細菌叢除去マウスで有意な違いはありませんでしたが、レム睡眠に特徴的な脳波成分であるシータ波スペクトルパワー密度が、腸内細菌叢除去マウスにおいて弱まっていました。以上のことから、腸内細菌叢を除去すると腸管内での代謝が大きく変化するとともに、睡眠覚醒パターンや睡眠の質にも変化が起こることが分かりました(参考図)。

>睡眠を含めた脳機能と腸内環境との関係が明らかになるに従い、生活習慣を通じた腸内環境の調整が、心身の健康維持のためにいかに重要であるかも分かってきました。本研究の進展により、現代社会において多くの人が悩みを抱える睡眠の問題を、日々の食習慣を整えるセルフケアによって解決できるようになるかもしれません。

>4週間にわたる抗生物質投与により腸内細菌叢を除去したマウスでは、神経伝達物質合成に関連するアミノ酸代謝が腸管内で大きく変動していることが分かりました。また、本来は夜行性であるマウスの睡眠・覚醒パターンの昼夜のメリハリが弱まり、レム睡眠がより多く生じていることを明らかにしました。

_____


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

||||||||||||||