給付金対象外で「偏見や差別を助長」 デリヘル経営者が国を提訴するまで –
毎日新聞 2020年9月23日
https://mainichi.jp/articles/20200923/k00/00m/040/088000c
I>>インターネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)を活用し、持続化給付金の対象から外された性風俗業の経営者が「法の下の平等に反する」と国を訴えた。CFの裁判費用集めは、始めて1週間もしないうちに第1目標の300万円を突破した。この経営者はデリヘルで「キャスト(派遣されるスタッフ)」として働いていた30代の女性。どんな思いで裁判に挑み、なぜこれほどの支援が集まるのか。ちなみに反社会勢力との付き合いはなく、きちんと納税もしているという。
>「セックスワークにも給付金を」訴訟のCFは、非営利の一般社団法人が運営するウェブサイト「CALL4(コールフォー)」で始まった。その趣旨は次のように紹介されている。
><国から「国民の理解を得られない」としてコロナ給付の対象から除外され差別を受けた性風俗店が、国に対しての訴訟を行います。訴訟を通じて『セックスワークisワーク』の意味が多くの人に伝わることを願います>
性風俗事業者が国提訴 コロナ給付金対象外で―東京地裁:
時事ドットコム 2020年9月23日
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020092300892&g=soc
>新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた中小事業者を支援する国の持続化給付金と家賃支援給付金の対象から、性風俗事業者が外されたのは法の下の平等に反するなどとして、関西地方のデリバリーヘルス業者が23日、国を相手取り約450万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こした。
>原告側弁護士によると、性風俗事業者が国の給付金事業をめぐり訴訟を起こすのは初めて。原告側は、国と給付金の事務委託契約を結んだコンサルティング会社「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社」とリクルートも訴訟対象に
>国は「社会通念上、国民の理解が得られにくい」として、性風俗事業者を持続化給付金などの支給対象から外している。
>新型コロナウイルスの影響で経済的な打撃を受けた事業者を支援するために、国が設けた「持続化給付金」や「家賃支援給付金」。
>性風俗業関連の事業者だけが給付の対象外とされているのは、職業差別であり、「法の下の平等」を保障する憲法に反しているなどとして、関西地方でデリヘルを経営する30代の女性が、国を相手取った訴訟を起こした。
>東京都立大学教授で憲法学者の木村草太さんは、この裁判を「意義深い」と語る。
>「性風俗関連の給付除外について、これまで公権力の側から合理的説明が行われていないので、正式な説明をさせるという1点だけでも、意味のある訴訟です」
>持続化給付金は、新型コロナで大きな影響を受けた事業者に対し、国が最大で200万円(個人事業主は最大100万円)を給付する制度だ。
>家賃支援給付金は、売り上げが減った事業者の地代・家賃の負担を軽減するため国が最大600万円(個人事業主は最大300万円)を給付する。
>どちらの制度においても、中小企業や小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者などが幅広く対象とされているが、ソープランドやラブホテル、デリヘルなどをはじめとする「性風俗関連特殊営業」の事業者は、対象外とされている。
>性風俗関連の事業者が支援対象から除外される理由を国会で問われた梶山弘志・経産相は、以下のように答弁している。
>「社会通念上、公的資金による支援対象とすることに国民の理解が得られにくいといった考えのもとに、これまで一貫して国の補助制度の対象とされてこなかったことを踏襲し、対象外としている」
>また、今回の訴訟の原告らが6月15日に中小企業庁へ申し入れをした際には、同庁の担当者は、これまでの給付金や補助制度でも対象外としてきたため、今回対象にすると「(過去の政策との)整合性が取れない」と説明した。
>原告はこうした国の対応は「法の下の平等」を保障する憲法14条への違反であり、給付金の給付契約を締結する際に不合理かつ妥当性を欠く判断がなされたと主張している。
>木村さんはこの裁判について、「通常の平等原則の訴訟よりも、一段ハードルが高い」と言及する。なぜか。
>「法律で『給付金の受給権をこの範囲の人々に与えます』と規定されている場合には、『この法律は不平等である』と訴えることが容易です。しかし、今回対象となる持続化給付金に、直接の根拠となる法律はありません。予算が承認され、その予算に基づいて国が贈与契約を結ぶという形式をとっています。その不平等を司法に訴えるには、『あちらとは契約を結ぶのに、こちらとは結んでくれない』という契約関係の問題を問うことになります」
>「平等原則は、不合理な区別をしてはいけないということ。裁量逸脱の禁止は、不合理な措置をしてはいけないということです。いずれにしても、その区別に合理性があるのかを問う訴訟になります」
>「国の判断および措置が合理的なものであるのか、それが唯一にして最大の争点です」
>「コロナ禍において、国会が行った立法は新型インフル特措法を改正し、新型コロナにも適用できるとした1点のみです。その他の様々な給付金、マスク配布は、国会が予算を承認するにとどまり、具体的な対象の選抜などは、行政の判断で行われています」
>「もちろん、国会では行政監視の一環として質疑を受けてはいますが、法案が示され、趣旨説明がされ、立法されるという厳格な手続きを多くの場合は踏んでいません。説明不十分なまま、行政の独断で様々なことができるシステムになっています」
>「だからこそ、公式に国が理由を説明する場を作ることが重要です。訴訟になれば、国は答弁書の形式で正式な説明を求められる。そこで課される説明責任はこれまでとは違うレベルです。国の説明に、国民の皆さんも注視するべきと思います」
>「報道がきっかけとなり、民主的プロセスが動くことにつながる場合もある。だからこそ、憲法訴訟はその判決が出たらそれで終わりというものではなく、どんな主張がなされ、どんな結論が出されたのかを踏まえて、民主的プロセスにフィードバックしていく必要があります。仮に、今回の裁判で原告側の主張が棄却されたとしても、そこで終わりではありません。それで本当にいいのか?社会で考えていく必要があります」
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真面目なラブホテル苦境 給付金もGoToも対象外 「推奨されていい」はずなのに
毎日新聞2020年9月19日 06時00分
https://mainichi.jp/articles/20200918/k00/00m/040/221000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20200919