>エネルギー問題の緩和に資する技術として、熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電発電が注目されています。その発電を担う熱電変換材料には、
>大きな熱電能(ゼーベック係数)4
>、高い電気電伝導率と、低い格子熱伝導率が必要です。このうち、格子熱伝導率が低いことは、材料両端の温度差、つまり電力を保つために必要な性質となります。
>しかし、2010年代に、カゴ状構造をもたない物質でも、ラットリングが起きることが報告されました。2013年に末國らのグループが熱電材料の候補物質として発見した合成テトラヘドライト(Cu12xTrxSb4S13、Tr:Mn、Fe、Co、Ni、Zn)では、三つの硫黄(S)原子
>が作るS3三角形の中心に位置する銅(Cu)原子が三角形の面直方向に非調和大振幅振動(平面ラットリング)しており、そのラットリングがガラス的な格子熱伝導率をもたらしていました。その後同グループは、元素置換を施したテトラへドライトのX線回折と非弾性中性子散乱の実験から、S3三角形の面積が小さい試料ほどCu原子の振幅が大きくなることを明らかにし、
>このラットリングの発生機構はS原子がCu原子に及ぼす化学的圧力であると推定しました(
>に、いろいろな圧力下で測定したCu10Zn2Sb4S13の比熱Cを温度の3乗で割ったC/T3の温度変化を示します。参考のため、典型的なカゴ状化合物であるクラスレート(Ba8Ga16Sn30)の結果(a)も合わせて載せています。4
>K付近のC/T3のブロードな山はラットリングに起因し、その山の温度がラットリングを引き起こすために必要な特性エネルギーに対応します。カゴ状化合物であるBa8Ga16Sn30では、C/T3のブロードな山は圧力増加とともに単調に高温側へ移動しています。このことは、加圧するとカゴの体積が減少することで、ゲスト原子(Ba)の振動エネルギーが増加することを示しています。一方、テトラへドライトの場合、C/T3の山は0
>本研究では、熱電変換材料として有望なテトラへドライトの格子熱伝導率抑制の起源である平面ラットリングが外部からの圧力で制御できることを実験的に証明しました。今後、そのような平面配置をもつ物質の探索・設計により、高性能な熱電変換材料が
>開発されると期待されます。
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