「異常な状況」と慶大教授 政府の補正予算に「政治案件」で巨費を計上:
東京新聞 TOKYO Web 2020年12月16日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/74515
>政府は第3次補正予算案で、新しい国土強靱化計画の初年度分として2兆3千億円を計上した。自民党の二階俊博幹事長肝いりの政策で、「切れ目のない経済対策」(内閣府)を理由に来年度から始まる計画を前倒しした。だが、近年の公共事業は人手不足で予算を使い切れない状態が恒常化している。国債の新規発行額が100兆円を超える中、今回の計画も必要性が疑問視されている。
>政府の追加経済対策
>◆必要性が疑問視される国土強靱化計画
>財務省によると、公共事業の予算が年度内に消化できず翌年度に繰り越したり、それでも消化できず国庫に返納された「不用額」の合計は年々拡大。2019年度の繰越・不用額は4兆1千億円で、5年前から倍増した。大規模災害で必要度の高い緊急復旧工事もあるが、今回のように景気対策の色合いが濃い事業も多い。
>使い切れない予算が注ぎ込まれる現状を、慶応大の土居丈朗教授は「まず繰り越している予算を消化するのが先で、異常な状況だ」と批判する。その上で「国土強靱化計画が補正に入ったのは、財務省が政治的な歳出膨張圧力に抵抗した結果だろう」と指摘する。
>◆使い切れない予算が注ぎ込まれる
>5年で事業規模15兆円と複数年にまたがる今回の計画は、緊急性のある事業が対象の補正予算に本来なじまない。それでも補正に計上された理由を財務省幹部は「当初予算の膨張を抑える引き換えに補正予算を受け皿にした」と明かす。
>ほかにも、「政治案件」として緊急性がないまま補正で計上された事業もある。菅政権の目玉政策の脱炭素化に向けた2兆円基金や、大学の研究資金を支援する大学ファンドの関連費用などだ。ファンドの財源は新たな国債の発行を避けるため、財務省が記念硬貨鋳造のために保有していた金の売却益約5千億円を充てる異例の手法を採る。
>◆緊急性は乏しく規模ありき
>「そもそも3次補正は必要なかった」。元日銀審議委員で野村総合研究所の木内登英氏は指摘する。国土強靱化などは必要としても緊急性は高くない。緊急性の高いコロナ対策費用(4兆円余)は、政府が確保している7兆円近い予備費のみで賄うことができる。
>3次補正の元となった追加経済対策を巡っては、今年7~9月期の需要不足(年換算で34兆円)を埋め合わせる規模を求める声が与党から相次いでいた。西村康稔経済再生担当相も閣議決定後の会見で「34兆円の規模は常に念頭に置いていた」と認める。
>「規模ありき」の予算編成で不要不急の事業が盛り込まれた結果、借金である国債の発行高は過去最悪となった。(森本智之)
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