桜を見る会出席者名簿で一躍話題になった「シンクライアント」とは何か

 公選法違反や反社・詐欺商法との癒着が指摘されている為、「出席者名簿を出せ」と要求されている内閣総理大臣安倍晋三主催「桜を見る会」ですが、12/2に安倍晋三は「データは消してしまった、内閣府のPCはシンクライアントだから復元できない」と国会で答弁しました。
 それに対してIT関係者から「シンクライアントなら、むしろデータ復元できないとおかしい」との指摘が多数出ています。

 では、このシンクライアントとは何なのでしょうか?

 一言で言うと、ディスクをローカルでは無くサーバー上で管理するPCのことです。
 
 PCのBIOSをいじったことがある人なら、「ネットワークブート」という項目を目にしたことがあるでしょう。そのネットワークブートの方法の一つが、シンクライアント方式です。

 通常のPCは、内蔵されたストレージ(ハードディスクやSSD等のこと)、いわゆる”Cドライブ”からOSを起動します。
(※外付けされたHDDやUSBメモリから起動する場合もあるが、業務用としてはあまり使われない。)
 データも、基本的には内蔵や外付けされた記憶装置に保存されます。

 これに対しシンクライアントPCは、内部ストレージを持ちません。外部ストレージも接続できないよう、USBポートも無効化されて運用されるのが殆どです。
 代わりに、ネットワークを介して、サーバ上で管理された起動イメージを読み込んでOSを起動します。
 Excel等で作成したデータは、ファイルサーバ上に保管します。

 ローカルで一切のデータを持たない為、その分セキュリティが高まるのがシンクライアント方式の特徴です。

 シンクライアントPCは、OSについてはイメージを読み込むだけなので、ソフトをインストールしたりデスクトップにファイルを保存したりといった変更は、反映されません。PCをシャットダウンすると全て破棄されます。
(自民党支持者が「シンクライアントだからデータは消える!!」と主張しているのは、おそらくこの事を指していると思われます。)

 しかし、1日の業務が終わってWindowsを落としたら都度データが消えてしまうのでは、業務に支障が出ます。
 そこで、残しておきたいデータは、「ファイルサーバ」というファイル管理用のサーバ上に別途保管することになります。
 このファイルサーバは、通常のPCからもファイル共有などの目的で広く用いられています。

 ファイルサーバはファイルを管理するサーバなので、(通常は)ファイルが簡単に消えないように工夫がされています。
 複数のサーバでデータを同期するミラーリング方式や、サーバ内部でもRAIDという複数のディスクにデータを保存する仕組みが採用されている事が、多くの役所や企業ではシステム監査基準として定められています。

 また、データのバックアップは個人でもよくやることですが、業務用のファイルサーバでは定期的にこれを行うよう運用基準で定められています。その為に自動バックアップを行う専用アプリケーションも多数出ています。
(Windows Serverの標準機能でも、ある程度の自動バックアップは出来ます。)
 バックアップをとっていないなんて事は、運用基準上あり得ません

 内閣府であれば、当然これくらいのことはやっているはずです。
もしやっていなければ、国会の責任でシステム監査を実施しなければなりません。)

 データ復元に手間がかかる、ならまだしも、復元できないなどとのたまうのは、内閣府は杜撰なシステム運用をやっていると自ら吐露しているに等しい愚言に他なりません。
 ちなみに国会議員には国政調査権が憲法で保障されているので、どれだけ手間がかかろうが国会議員が要求したら行政府にはデータ復元の義務があります。
 本来、その手間を省く為に公文書保管基準が定められているはずなのですが…。

 いずれにしても、シンクライアント方式は全く関係ない話なので、言い訳にすらなりません。

 これが、自民党政府の限界なんですね。


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