民間頼みの日本の科学研究予算の実態~2020年科学技術研究調査結果【総務省統計局】より

 「日本学術会議」の件でも「会員が科研費を優遇されている」というデマが飛んだり、逆に地方大学・研究機関の研究費不足をクローズアップさせる事になった、「科研費」(科学技術研究費)のデータです。
 なお、この研究費には大学だけで無く民間企業の研究費も含まれています。


■2020年(令和2年)科学技術研究調査結果
総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/index.html

>≪研究費≫
○2019年度の科学技術研究費(以下「研究費」という。)は、19兆5757億円(対前年度比0.3%増)で、3年連続で増加し、過去最高
○国内総生産(GDP)に対する研究費の比率は、3.50%と前年度に比べ0.01ポイント低下
○2019年度の研究費を研究主体別にみると、企業が14兆2121億円(研究費全体に占める割合72.6%)、大学等が3兆7202億円(同19.0%)、非営利団体・公的機関が1兆6435億円(同8.4%)
○企業の研究費を産業別にみると、「輸送用機械器具製造業」が3兆1791億円 (企業の研究費全体に占める割合22.4%) と最も多く、次いで「医薬品製造業」が1兆3392億円(同9.4%)
≪研究者数≫
○2020年3月31日現在の研究者数は、88万1000人(対前年度比0.7%増)で、4年連続で増加し、過去最多
○研究者1人当たりの研究費は、2222万円(対前年度比0.4%減)で、3年ぶりに減少
○女性研究者数(実数)は、15万8900人(対前年度比2.6%増)で過去最多、研究者全体に占める割合は16.9%(前年度に比べ0.3ポイント上昇)と過去最高

>自然科学に使用した研究費は18兆1657億円で,前年度に比べ0.2%増となっており,研究費全体に占める自然科学に使用した研究費の割合は92.8%

 ※人文・社会科学の研究費は1兆4100億円、7.8%。
 ※ここで言う自然科学には、工学・数学・情報科学等も含むと考えられる。

 尚、大学限定だと、
>学問別研究費
自然科学部門が2兆4619億円(大学等の研究費全体に占める割合66.2%),
人文・社会科学部門が8384億円(同22.5%)
となっている。

組織・学問別研究費(大学等

>企業が14兆2121億円(研究費全体に占める割合72 .6% ),
大学等が 3兆7202億円(同19.0%),
非営利団体・公的機関が1兆6435億円(同8.4%)
となっている。これを前年度と比較すると,非営利団体・公的機関が1.7%増,大学等が1. 1%増となっているのに対し, 企業が0.1%減 となっている

>支出源別にみると,
民間が16兆1791億円(研究費全体に占める割合82.6% ),
国・地方公共団体が3兆2901億円(同16.8% ),
海外が1065億円 (同0.5%)
となっており,民間が研究費全体の約8割を占めている。これを前年度と比較すると,国・地方公共団体が0.5%増,民間が0.2%増となっているのに対し,海外が3.8%減となっている

 支出だけでも、民間企業が7割以上を占めている。
 支出源(財源)に至っては、民間財源が8割以上に上る。
 このデータを見る際は、この点を常に頭に置いておかなければならない。

 尚、企業研究費のうち、資本金100億円以上の企業が占める割合は71.5%。

 

>費目別にみると,
人件費が8兆5318億円(研究費全体に占める割合43. 6% ),
原材料費が2兆5501億円(同13.0%),
有形固定資産購入費が1兆7338億円(同8.9%),
無形固定資産購入費が2297億円(同1.2%),
リース料が806億円(同0.4%)

 ※無形固定資産購入費とは、コンピュータソフトウェアや各種権利使用料等のこと

>開発研究費が11兆7132億円(自然科学に使用した研究費全体に占める割合64. 5%),
応用研究費が3兆7073億円(同20.4%),
基礎研究費が2兆7452億円(同15.1%)
>前年度と比較すると,
開発研究費が1.0%増となっているのに対し,
応用研究費が1.8%減,
基礎研究費が0.2%減

 研究費の6割以上を開発研究費(=ほぼすぐ実用化に至るような研究)が占めている。(支出の7割が民間企業なので、ある意味当然。)
 その土台となる応用研究費は2割。
 科学全体の礎になる基礎研究の科研費は、15%、2.7兆円。

 短期的利益に直結しない基礎研究は、よほど余裕のある大企業ぐらいしかやらない。

>企業の性格別研究費(自然科学)
開発研究費が10兆8236億円(76.4%),
応用研究費が2兆2728億円(16.0%),
基礎研究費が1兆731億円(7.6%)
となっている。これを前年度と比較すると,開発研究費が0.8%増となっているのに対し,基礎研究費が3.5%減,応用研究費が3.0%減

性格別研究費(自然科学に使用した研究費)の推移(企業)

>非営利団体の性格別研究費(自然科学)
開発研究費が6770億円(42.9%),
応用研究費が5318億円(33.7% ),
基礎研究費が3679億円(23.3%)

>大学の性格別研究費(自然科学)
開発研究費が21 26億円(8.8%)
応用研究費が9027億円(37.3%),
基礎研究費が1兆3042億円(53. 9%),

 自然科学限定で、これである。
 あらゆる研究のベースになる基礎科学の研究を担っているのが大学だという事が良くわかる

>特定目的別研究費
特定目的別研究費の推移、総務省統計局

 ※ライフサイエンス(生命科学)には、医療研究も含まれる。
 ※情報科学には、数理科学・システム科学は含まれない(https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/kagaku/h27/pdf/3siryo2.pdfより)
 

>研究関係従業者数は110万2500人で,前年度に比べ0.8%増
研究者が88万1000人(研究関係従業者全体に占める割合79.9%),
研究事務その他の関係者が9万37 00人(同8. 5%),
研究補助者が6万9400人(同6. 3%),
技能者が5万8500人(同5. 3%)

 補助職・事務職も含めて、100万人ちょっとですか。少ないですね。1億3千万の人口を抱える国として恥ずかしいレベルですね。
OECD加盟国等の研究者数(専従換算値)

 尚、企業に雇われていた人は、61万7100人で,前年度に比べ0.9%増。
 非営利団体に雇われていた人は、7万4700人で,前年度に比べ0.8%減。
 大学に雇われていた人は、41万700人で,前年度に比べ1.0%増。

>研究者1人当たりの研究費は2222万円で,前年度に比べ0.4%減

 民間企業も含めた平均値である。企業だけの研究費は、研究者1人当たりの研究費は2801万円で,前年度に比べ0.7%減。
 非営利団体・公的機関における研究者1人当たりの研究費は4231万円で,前年度に比べ1.2%増。(理研、産総研、NICTなどの大規模公的研究機関も含まれている。)
 大学では、研究本務者1人当たりの研究費は1252万円で,前年度に比べ0. 3%増。(大学だと他組織から大学に来て研究をしている人、いわゆる研究員もいる為、その数は除外されている。)

 大学(≒1千万円)<民間企業(≒3千万円)<非営利団体・公的研究機関(≒4千万円)の、1人あたり研究予算があることになる。
 (無論、全分野の平均値である。)
 大学の1人あたり研究費がいかに少ないかがわかる。

 なお、誤解している人がいるかもしれないが、これは給与(生活費)では無い。全額研究そのものに使われるお金である。(生活費は別途、どこかに雇われるなどして研究者自身が確保しなければならない。)

>男女別にみると,男性が78万3300人(研究 者全体に占める割合83.1%),女性が15万89 00人(同16.9%)

>女性の割合を前年度と比較すると, 新規採用者数は0.4ポイント低下となっている。自然科学部門別にみると,理学が2.2ポイント上昇,保健が0.1ポイント上昇となっているのに対し,工学が0.6ポイント 低下,農学が0.2ポイント低下
男女,自然科学部門別新規採用者数(実数)(総括

 農学系だと半分近くが女性が占めるようになっているのに対し、工学系では1割をようやく超える程度。尚、どちらも2018年よりも減っているのが気に掛かる。

 ちなみに、大学では保健(医学系含む)以外では、女性比率は増えている。
男女,自然科学部門別新規採用者数(実数)(大学等)

OECD加盟国等の女性研究者数(実数)

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