政府がCOVID-19(通称新型コロナ)対策薬として承認に向けた治験が開始され、配布も検討され始めたアビガン錠。
一体どういうものかと検索したところ、開発者である白木公康富山大名誉教授の論文がWeb上で公開されていました。
No.5005 緊急寄稿(2)COVID-19治療候補薬アビガンの特徴
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14305
一応医学論文なので、化学や生物の専門用語でいっぱいです。
が、「医師が患者に説明する為の資料」として書かれたとのことなので、用語の意味がわかる人間にはCOVID-19というウイルスの特徴からアビガン錠がどう作用するかまで、大変理解しやすい内容になっています。
筆者の専門は数理物理や経営情報なので化学・生物はあんまり詳しくないのですが。一応わかる範囲で整理しておきます。
(多くの人にとって既知の情報もかなり含まれます。)
1.(そもそも論として)ウイルスは菌じゃない
意外とここを勘違いしている人が多い気がします。
菌は細胞を形成する、(極端な話)人間と同種の生物です。
一方、ウイルスは遺伝子(COVID-19の場合はRNA)がタンパク質やアミノ酸で包まれただけの、部品のような生命です。
ウイルス感染とは、体細胞の遺伝子にウイルスの遺伝子を組み込まれてしまうこと。
それに対し人体が持つ免疫機構が反応して、感染した細胞ごと攻撃して発熱する。ということのようです。
なので、細菌感染症は菌を死滅させる薬を投与すれば一晩で沈静化しますが、ウイルス感染の場合は結果的に免疫機構が自分の体を攻撃する、謂わば究極の自傷行為を行うので、人体全体としては非常にダメージが大きい。
ということのようです。
(だから、体力のない病人や高齢者、幼児は致死率が高い、ということでしょうか。)
2.ウイルスそのものは割と簡単に死ぬ
ウイルスは遺伝子の周りにちょこっとタンパク質があるだけで生命力は非常に弱い、なので空気中を漂っていればすぐに乾燥して死滅してしまう。とのことです。
この、確実にウイルスが死滅する時間的距離が、約2m、とのことです。
感染予防で散々言われている、社会的距離2mの根拠は、ここにあるようです。
3.但し、水分があるとウイルスは生存してしまう
除湿が肝心、とのこと。部屋の換気も、除湿を目的としたものである必要があるようです。
(雨の日は要注意ということ?)
また、空気よりも保湿力の高い物質にウイルスが移動すると、その物質の水分を使ってウイルス生存率が高くなってしまう、ということのようです。
金属はそれ自体には保湿力はありませんが、周囲をイオン化(自由電子の放出入)する作用がある為、金属の種類によっては周囲に水分子を引きつけてしまうものがあります。人間には感知出来ないレベルの量ですが、その水分子を使ってウイルスが生存してしまう、という例が多々あるようです。
鼻孔・咽頭は外気に触れて且つ水分を多く含む部分なので、ここを死守することが大事(故にウイルスを通さない不織布マスクが有用)、ということなのでしょう。
また、アルコールは揮発性の高い液体で、その揮発力の高さで周囲の水分に熱エネルギーを与える→水分が蒸発する、という作用があります。これがアルコール消毒の原理です。
アルコール消毒をする時は、ただ吹きかけるだけでなく、ちゃんと乾燥させないと意味がありません。
4.アビガンはRNA生成時のバグを利用する
論文には、インフルエンザウイルスの場合のアビガンの作用が書かれています。
ざっくり言うと、アビガンはRNAの材料によく似ているので、(インフルエンザウイルスだと)RNAの転写複製時に本来の材料の代わりにアビガンを取り込んでしまって、そこでRNAの生成が停止してしまう、という原理だそうです。
いくら似てるからってなんで違う物質取り込むんだよ、とツッコみたくなりますが、ウイルスのRNA生成機構のバグ、としか言い様がないですね。
で、COVID-19もRNA型のウイルスなので、同様の効果が期待されるのではないかということで、中国・武漢で試験を行ったところ、有用性が確認出来た、ということらしいです。
但し、アビガンの副作用として、尿酸値が上がるとのことです。
(尿酸値上がる食生活してる人は服用出来ないかも?)
5.PCR検査は継続して行うべき
>COVID-19は,咽頭のウイルスは発症とともに検出される。ウイルス量は10日がピークで,12~15日で減少する。鼻咽頭には症候性患者と無症状感染者も同等のウイルス負荷があるため,無症状感染者からの感染の可能性が示唆されている)。呼吸器症状の有無にかかわらず,ゲノム数が多ければ,病勢の評価,周囲への感染リスクの評価等に使用できると思われる。すでに,数千件を超えるPCR検査の結果があるはずなので,回復した患者はゲノム量が少ないなどの,PCR法による病態分類が示されることを期待したい。
ウイルスゲノム数、簡単に言うとウイルス残機がどれだけあるかを調べて臨床データと比較していくことが大事で、その為にも回復した患者に対してもPCR検査による追跡調査が必要、というのが教授の見解です。
日本は何故か、回復した患者の検査どころか、発症した疑いのある人に対してもPCR検査が行われない、ということが未だに横行しているようですが。
これはもう、医学の範疇を大幅に超えて政治や社会の問題になってくるので。今回は省略しましょう。国会で野党が追及しても原因不明としか返ってこない、ということだけは明記しておきます、このサイトの趣旨として。
以上のように。
アビガンは現状はあくまでも”インフルエンザ薬”でしかなく、COVID-19に対しては「武漢で有意な効果が確認された」というレベルでしかないです。
が、最初の感染拡大地である武漢で効果が確認出来た、というのも事実で、「そこそこ」期待してはいいと思います。
ただし、あくまでも「武漢でしか確認していない」ものなので、過度の期待は禁物です。
(別の文献によると、COVID-19は最低でも5つの遺伝子パターンに分化しているらしいので。)
そもそも感染しなければ、それに越したことはありません。
湿度の低い場所で、直接の対人接触を避ける。感染が疑わしい人は即検査して、陽性なら隔離する。
最低でも梅雨が過ぎるまでは、これを続けていくしかないようです。
長期戦、ですね。
東京五輪、延期してなかったら大変なことになってましたね。
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