天然食用色素による安全で安価な細胞の生死判定法を開発 ~ミドリムシからヒトがん細胞まで適用が可能、幅広い分野への応用に期待~
プレスリリース 掲載日:2020.09.25
東京理科大学
https://research-er.jp/articles/view/92398
>細胞の生死判定に一般的に用いられる合成色素は有毒であり、生きた細胞も殺してしまうため、試験後の培地は使用できないという問題がありました。
>細胞の生死判定は創薬分野をはじめとする幅広い分野で必要とされるため、本研究で確立した方法は様々な用途での活用が期待されます。
>細胞の生死を判定する方法の代表的なものとして、色素に染まる細胞を死細胞と判定する色素排除試験法、1個の細胞を寒天培地上で増殖させ、コロニーを形成したものを生細胞と判定するコロニー形成法、生細胞もしくは死細胞特異的に漏出する酵素から判定する方法、蛍光色素で細胞標識し、フローサイトメトリーで個々の細胞の生死を検出する方法が挙げられます。しかし、これらの方法は細胞毒性がある、試薬や装置コストが高い、熟練技術や分析に長い時間を要するなど、それぞれ問題を抱えています。
>そこで、本研究を主導した山下助教は、株式会社ユーグレナと共同特許出願を行った研究「栄養強化食品の製造方法、ユーグレナ含有食品組成物及び食品の栄養強化方法特願2017」の発展研究を行っている際に、天然食用色素で染色された細胞は動かず、染色されない細胞は動くことを偶然発見したことから、有害な合成色素の代わりに安全で安価な天然食用色素を生死判定に使うことができるのではないかと考え、研究に取り組みました。
>山下助教らはまず、ユーグレナを用いて天然食用色素である紅麹色素とアントシアニン色素で細胞の生死判別ができるか検討を行いました。その結果、マイクロ波処理を行ったユーグレナに対しては、紅麹色素とアントシアニン色素は合成試薬であるトリパンブルーおよびメチレンブルーと同等の死細胞判定能力を示し、塩化ベンザルコニウム処理を行ったユーグレナに対しては合成色素よりも迅速かつ均一な死細胞判定能力を示しました文献1)。さらに、ゾウリムシを対象とした実験でも、紅麹色素とアントシアニン色素は合成試薬であるメチレンブルーと同じくらい迅速に死細胞を染色できることを突き止めました文献2)。
>今回の研究から、ユーグレナとゾウリムシにおいて既に実用性が確認されていた紅麹色素を用いた細胞の生死判定方法を、乳がん細胞にも適用できることを示されました。これは、食用色素を用いた生死判定方法が他の種類の細胞にも適用できる可能性を示唆する結果です。
>研究を行った山下助教は「細胞の生死判定法は、医療、化粧品、食品、工業等の様々な産業分野における基礎研究、衛生管理、品質管理等で重要な役割を担っており、その需要は多岐にわたります。従来使用されてきた合成色素を本手法の天然色素に代替することで、上記分野におけるコスト、安全性試料、ヒト、環境に対して)の改善に役立ちます。さらには、細胞の生死とは何か、どのタイミングで死ぬのか、死因の究明という新たな分野を切り開く手法を担うツールとしての展開も期待されます。天然色素は生死判定用途以外にも、まだ見つかっていない有用な性質を持っている可能性が高く、探索の余地が大いにあります。」として、今後の研究の発展に意欲を示してます。
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