タコの腕には脳がある?
日本の研究.com 掲載日:2020.10.30
沖縄科学技術大学院大学
https://research-er.jp/articles/view/93510
>タコは、エイリアンと異名がつくほど、地球上で最も奇妙な生物の1つで、3つの心臓と8本の手足、そして高い知能を持ちます。非常に柔軟で多用途に使える8本の腕で、瓶を開けたり、パズルを解いたり、水槽から脱出したりすることができます。しかし、タコがどのようにして8本すべての腕をコントロールしているかについての詳細は未だに謎のままであり、研究者たちが現在も解き明かそうとしています。
>タコは発達した神経系を持ち、神経細胞の数は犬と同等で5億個以上あります。しかし、神経細胞の大部分が脳にある犬などの脊椎動物とは異なり、タコの神経細胞の3分の2以上は腕や胴にあります。
>このように奇妙に形成された神経系を持っていることから、タコの腕はそれぞれ脳を持っていて、中枢の脳からは独立して行動しているのではないか、と科学者たちは以前から考えてきました。これまでの研究で、タコの腕は反射ループを使って協調した動きをつくり出したり、捕食者の注意をそらすために切り離されることもあり、切り離された腕はその後も長時間動き続けるということがわかっています。
>「タコは中枢の脳1つと腕に小さな8つの脳、合計で9つの脳を持つ生物だと考える研究者もいます」とグットニック博士は話します。しかし、
>「この研究は、タコの腕が中枢の脳から完全に独立して行動しているのではなく、末梢神経系と中枢神経系の間に情報の流れがあることを明らかにしました。タコが9つの脳を持つというよりは、1つの脳と8本の非常に賢い腕を持っているということです。」とグットニック博士は説明しています。
>「タコが実際に自分の腕の位置や動きをわかっているかどうかは不明です。だから私たちの最初の疑問は、タコは自分の腕が見えていなくても、どこにあるかを感知するだけで、その腕に指令を出すことが可能かどうかということでした」とグットニック博士は説明します。
>別の6匹のタコに、片方の側管の内面がザラザラとしているものと、もう片方の側管の内面がなめらかなY字型の迷路を用意しました。それぞれのタコが、迷路のザラザラな方となめらかな方のどちらか一方を選ぶと、餌の報酬が与えられるしくみです。
>何度も試行錯誤を重ねた結果、6匹中5匹が、側管内面のそれぞれの質感が左右どちら側にあるかに関わらず、きちんと選択し、どちらの側管に餌があるかを学習したことがわかりました。その場合、タコは迷路をゆっくりと探索をし、まず側管内面の特質を判断してから、その側管を進むか、別の側管に移動するかを判断しました。
>固有受容感覚の実験では、タコは迷路の右側もしくは左側に向かって「まっすぐ動く」傾向が見られました。次に触覚識別の実験では、タコが迷路をゆっくりと「探索する」動きが見られました。
>重要なことは、左右どちらのタイプの迷路でも、ひとたびタコが正しい関連付けを学習すると、それまで使われていなかった腕を使って側管をきちんと選択できることがわかりました。「この結果は、各腕が独立してタスクを学習しているという考えを否定することになります。タコの学習は脳内で行われ、その後、学習された情報がそれぞれの腕で利用可能になるのです。」
>ただし脳内のどこにこの情報が保存されているかはわかっておらず、今後の実験に委ねられた問題でもあります。
>「タコの脳は人間とはまったく異なっています。実際、私たちにとっては未だによくわからず、まだまだ学ぶべきことはたくさんあります」と、グートニック博士は語っています。