人間と同じ?「働きアリは早死にする」衝撃事実
アリの社会でも経済学の理論が見出せる
2020/12/18 10:30
https://toyokeizai.net/articles/-/394734?page=2
>観察していると、働きアリは働かないアリの分まで労働するため早死にする。働かないアリは多くの子を産みますが、産まれてきたアリも遺伝的に働かないので、働かないアリのコロニーは次世代の個体を残せなくなるんです。
>行動経済学で言われてきた「力を合わせれば大きな成果が得られるが、他者の働きに期待して怠ける者がいれば協力が成り立たなくなる」という「公共財ゲーム」のジレンマを、アリ社会の中にも見出せました。
>ほかにも「裏切り者がいないか監視し、見つけたら厳しく罰する」という習性も見つかっています。一般に、幼虫を育てたり、エサを捕ったりするのが働きアリの仕事で、産卵を担当するのは女王アリです。こうした役割分担を守らずに、産卵する働きアリもいます。
>アリ社会では「産卵=働かないこと」を意味するので、産卵する働きアリが出現すると、他の働きアリが産卵を妨害したり、卵を破壊したりします。どうです?
>しかも、その「取り締まり」の度合いが集団の成熟度によって異なるということも突き止めました。働きアリの数が100匹未満の若い集団の場合、ほとんどの卵が壊されます。
>ところが200匹以上の成熟した集団になると、破壊された卵は20%程度でした。つまり集団がまだ非力な時には規律が優先され「強い取り締まり」が働きますが、集団が成長すると「取り締まり」が緩んで働きアリの利己的行動もそこそこ許容されるのです。
>ヒアリやアルゼンチンアリのように、人の生命や生態系に影響を及ぼす恐れがある特定外来生物に指定されているアリに関しては、日本に定着した場合の影響力が大きいので、殺虫剤を使って防除するというのは一つの手だと思います。もちろん、それで十分なはずはありません。
>先ほど説明した分業モデルの実証を通して「なぜ在来アリを駆逐するほど侵略性が高いのか」の基礎研究を深めていくつもりです。外来アリは日本でも社会問題になってきたので、頑張って社会貢献したいと思います。
>でも同時に、「これまでないがしろにされてきた基礎的な研究を継続していたからこそ、こういった対策が取れるんですよ」という点も示せたら、と思っています。
>社会に対する寄与をあえて意識せず、研究者それぞれがそれぞれのテーマを掘り下げていく。その掘り下げた研究成果が結果的に社会への寄与につながっていくんじゃないか。私はそう信じています。
>基礎的研究を通して、アリの集団には「働かないアリ」「裏切り者」がいることがわかりました。「裏切り者」が進化することで、社会の共同を破壊する現象が起こっていることも明らかにすることができました。
>こういう「ペイオフ構造」を有するゲームが自然界で成り立っているのは、既知の生物では人間とアリと微生物だけなんです。
>ただ、裏切り者が進化していく裏側では、共同するアリが集団の中にすごくたくさんいるのもまた事実です。局所的には裏切り者のアリが共同するアリの働きを食い物にしていますけど、おおむね集団の秩序は維持されているわけです。
>人間の社会も同じだと思います。いつの時代も利己的な振る舞いをする人や団体がいて、利己的な行動は広がりやすいという特徴を持っている。それでも私たちの社会の共同性は維持されている。それがなぜかということを知りたくて、私はアリの研究を続けているわけなんです。
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遺伝的に働かないのであれば、それは働きアリでは無くて”女王になれなかった女王アリ”なのでは? という気もしますが。
「王になれなかった王型人間」は働こうとしない、というのは実際にありそうですね。あくまで感覚で、実証データはないですが。
それを何の役に立つのかわからないとか言われがちな基礎研究に結びつける発想は、なかなか面白いです。