http://www.moj.go.jp/content/001138926.pdf
頭痛と吐き気がするような上級国民共の神学論争の記録であるが、確かにこれを読まないと彼らの詭弁の構造はわからない。
以下、一部抜粋
宮田委員
私は暴行・脅迫要件の撤廃には反対の意見でございます。公訴事実は特定されなければ攻撃防御のために資することはできません。暴行・脅迫があるということはどのような行為があったのか,どのような事実があったのかを特定するために極めて重要な役割を果たしています。
そして,もう一つ言えるのは,現在,暴行・脅迫要件はかなり緩和されているということでございます。強盗罪の場合には,財物奪取に向けた,正に文字どおりの暴行・脅迫であるわけですけれども,強姦罪の場合には抗拒不能な心理状態を作り出すような状況があるのかないのか,そこを認識しているのかどうかというところでかなり広く暴行・脅迫を認めているのが現状であろうと思います。現に二人きりの状況であったとか,助けを求められないような環境にあった女性が,通常であれば性交のときに当然に向けられるような有形力,例えば肩を押さえたとか,横に押し倒したというようなことをもって暴行を認めている案件は相当数見られるところでございます。です から,強姦罪では,強盗罪に言うような暴行・脅迫までを求めない運用がなされている。このような状況であえて暴行・脅迫要件を外すべきなのかは私は極めて疑問であると思っています。
また,暴行・脅迫はなかったけれども抗拒できなかった案件については,準強姦の規定を用いて抗拒不能だとしています。欺罔された,例えば芸能界にデビューさせてやるというような甘言を用いられ,あるいは宗教上の特殊な関係を利用しての性行為の強要をした例などについて,既に準強姦が認められているわけです。ですから刑法第177条,第178条のストライクゾーンが非常に広いところで,
これで同意なく性的行為は全て犯罪だということになりますと,弁護側,被告人側で同意があったという反証をしなければならない事態に追い込まれる。それは現在の訴訟構造から見てもおかしいのではないかというのが私の意見でございます。
>肩を押さえたとか,横に押し倒したというようなことをもって暴行を認めている案件は相当数見られるところでございます
いや、それが認められてないからこの騒ぎになってんだろ何言ってんだこいつ。
>弁護側,被告人側で同意があったという反証をしなければならない事態に追い込まれる。それは現在の訴訟構造から見てもおかしいのではないか
それはむしろ、現在の訴訟構造の方がおかしいのでは…?
井田委員
結論的としては宮田委員と一緒で,強い疑念を持っています。
暴行・脅迫要件を撤廃すべきだという立法提案の前提にあるのは,実務上,意思に反する性交の強制があったというケースでも,第177条が予定している高いハードル,つまり最狭義の暴行・脅迫,一般には相手方の反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫と言われていますが,その要件が認められないということで訴追,立件が不可能になり,あるいは起訴されても無罪になることがあり,これが不当であるという考え方であろうと思います。
要するに,被害者の意思に反して性交が強制されても強姦は成立しないという事態が生じているがそれは不当である。そのような不当な事態が生じているのは,暴行・脅迫要件のハードルの高さのゆえなのである。正にそのことが批判の的になっているのだろうと思うのです。
違う。全然違う。
角田委員
私は暴行・脅迫要件の撤廃が望ましいと考えております。ただ,まだ撤廃までに行かないともし考えるのであれば,強姦罪,準強姦罪も含めてですけれども,その本質は不同意性交罪だと言われているわけですので,そこから再検討すべきではないかと思います。暴行・脅迫や準強姦の心神喪失,抗拒不能は,不同意であることが外から割と分かりやすい状況を言っているのだと思います。しかし ,実際には不同意ということは必ずしもこの四つだけによって認められるわけではなくて,それに入らない,しかし不同意であるという事案がたくさんあって,それらの事案は結局無罪になっていくわけです。また,この撤廃とは少し論点が 違うのですが,判例によっては,不同意であることを認定しながら,加害者が,被害者が不同意であると認識できなかったあるいは誤解したということで故意がないという形で無罪になっているものもあるわけです。ですから,どのように暴行・脅迫が加えられて,どのレベルのものであったかということは,その後で加害者の故意を判定するところにつながっているという問題が一つあるのですけれども,それはともかくとして不同意を表すのは,この暴行・脅迫,心身喪失,抗拒不能だけではないということなので,それらについてもやはり不同意性交罪として処罰する必要があるのではないかと思っています。
では,どんなものがあるかということですが,いろいろあると思いますが,偽計とか,それからフランス刑法では不意打ちというものがあると書いてあります。また,威力というのも私はここに入ってもいいのではないかと思います。それと,薬物の使用もです。こういうふうに考えていくと,強姦罪と準強姦罪を一つのものとして考えるということにもつながっていくのではないかと思います。例えば威力という場合,支配的関係,その後の関係性の議論のところでやはり 拾えないものが出てくる。それは威力ということで捉えるべきではないかと思っています。例えば夫婦間強姦で,繰り返されたドメスティックバイオレンスの結果,もう妻は夫のさしたる暴行・脅迫がなくても,不同意ながら性行為に応じさせられている例がたくさんあるわけです。むしろドメスティックバイオレンスの経験が重なれば重なるほど何も暴力の必要がない,特別なことは何も必要ないということが起きています。
それから,知的障害がある場合,年齢の問題は後から論じられますが,知的能力が劣るという被害者の場合,自己表現がうまくできないことがあるということがあります。これは頂いた資料の中に入っていなかったのですが,岡山地裁の平成6年8月31日付けの判例があります。これは最終的にはわいせつ誘拐ということで有罪になって執行猶予が付いている事案ですが,この被害者は言われるままに加害者の車に乗って手淫,口淫を行った。そのときに彼女は13歳でしたが,同年齢の人より知的能力が低いということで,ほとんど無表情で騒がなかったということで,それもあって被告人は終始穏やかな状況でそれを行ったということです。けれども被害者が受けた心身のダメージは非常に大きかったということは判決から読み取れまして,それで結果的には300万円で示談したということも-3-
出てくるわけです。ですから,今のようなケースのときは,暴行・脅迫とか抗拒不能とか心神喪失のどれにもうまくはまらないということになってくると思います。それから,被害者側に生じたことを考えるとやはりこれは拾うべきではないかと思っております。それから,これはやはり軽度の知的障害の事案ですが,家族が加害者です。被害者は13歳だったようですが,本人にはそれほど 明確な被害感情がなかったということもあるわけです。ですから性行為が行われている現場においては加害者側のそれほど 激しい暴行・脅迫もないということが起きてきたときに,こういう事案が処罰されなくていいのだろうかというのは非常に疑問があります。家族が加害者という事案については,最終的には青少年保護条例違反で処罰されたという結論になっているようですが,青少年保護条例程度でいいのだろうかということを考えますと,暴行・脅迫要件を撤廃するか,あるいは撤廃しないまでも,今申し上げたような四つの徴表に当てはまらないものについては,やはりここに入れるべきではないかと私は考えております。
委員は他にも数名いるのだが、角田委員のような意見の持ち主は、少数派である。
要するに彼らは、司法権力という壁の内側に棲む、現実を知らない上級国民なのだ。
ちょうど同じ時期にあった、”残業規制”をめぐる労働者無視の有識者議論と全く同じ構造のように感じます。