太平洋横断級10,000km超のセキュア光ファイバ通信に成功位相変調方式のY-00光通信量子暗号により、これまでの10倍の伝送距離を実現_
日本の研究.com 2020年12月6日
https://research-er.jp/articles/view/94653
>玉川大学量子情報科学研究所(東京都町田市
>所長:相馬正宜)の谷澤健准教授と二見史生教授は、同所が研究を推進してきた位相変調方式のY00光通信量子暗号(1)(以下、Y00暗号)を用いて、10>000kmを超える安全な光ファイバ通信が実現できることを
>実証しました。この通信方法は量子雑音(2)のもつ真にランダムな性質を用いて信号を暗号化することにより、光ファイバからの盗聴を防ぐことができるものです。今回の成果により、太平洋横断級の光海底ケーブルにおいても、暗号化された安全な通信システムの実現が期待されます。
>Y00暗号は、暗号鍵(3)により多値光信号を発生し、信号受信時に不可避な量子雑音のもつ真の不確定性を利用して光ファイバからの盗聴を防ぐ技術です。これまでに、光の強度を変調する方式で、最長1>000kmの光ファイバ伝送距離を実証(4)しています。今回、光の位相を変調するY00暗号化を採用し、コヒーレント光受信(5)することで、これまでの伝送距離を大きく上回る10>118kmの暗号化光ファイバ通信に成功しました。玉川大学の独自技術である粗密光位相ランダマイズ法(6)を用いることで、高い安全性との両立を実現しました。図1に今回の成果により実現が期待されるY00暗号を用いたセキュア光海底ケーブル通信のイメージを示します。
光海底ケーブルは、50~60km程度毎に光増幅器にて光信号が増幅され、例えば日米間においては総長約10>000kmとなります。今回は実験室において光海底ケーブルを模擬した実験系を構築し、約50km毎に光増幅が行われる総長10>118kmの光ファイバを、40ギガビット毎秒(DVD1枚を1秒以下で転送できる通信速度)で暗号化通信する実験に成功しました。
>これからの超スマート社会では、IoTにより身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながり、金融決済や個人情報等の多くの重要な情報がやり取りされます。世界中に張り巡らされている光ファイバを用いた通信システムが、この仕組みを基盤として支えています。より安全・安心な通信インフラの実現に向けて、光ファイバ通信のセキュリティ向上は重要な課題です。
隣接する光信号間の距離が極めて短くなると、受信時の光・電気変換で必ず生じる量子雑音の影響で、鍵をもたない受信者は平文を正確に復元することができません。つまり、光ファイバからの盗聴を防ぐことができます。量子雑音は真にランダムな性質をもち、決して避けることのできない物理現象です。よって、コンピュータ等の技術進展により破綻することがない極めて安全な光通信システムを実現できます。
>データと暗号鍵をY00暗号生成部に入力し多値信号への変換を行い、波長1550nmのレーザ光の位相を変調してY00暗号を発生しました。IQ変調器によるデータ変調後に粗密光位相ランダマイズ法にて暗号化を行いました。粗密光位相ランダマイズ法は、二つの位相変調器を同期して駆動することで単体の電気デジタル・アナログ変換の分解能を超える極めて多値の光位相のランダマイズを可能とします。暗号化後の光信号は218値の位相レベルをもちます。偏波多重化を行った後のデータレートは40Gbit/sで、長距離光ファイバ伝送は光周回伝送システムを用いて行いました。受信側では、フリーランニングのレーザを局発光として用いるイントラダインコヒーレント受信を行いました。デジタル化後に、暗号の復号化を統合したデジタル信号処理にてデータを復調しました。
>今回、位相変調方式のY00暗号を用いることで、初めて盗聴に対する暗号化を施した太平洋横断級の10>を超える光ファイバ通信を実現しました。今後は、さらなる高速化や波長多重技術を用いた大容量化を行い、Y00暗号の光ファイバ通信システムでの実用化に向けて研究開発を進めていきます。
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