もと湿地の水田が洪水の発生を抑制する_防災・減災を考慮した土地利用~【日本の研究.com】

もと湿地の水田が洪水の発生を抑制する 〜生態系を利用した防災・減災を考慮した土地利用の実現に貢献〜京都産業大学 首都大学東京~日本の研究.com 掲載日:2020.03.23https://research-er.jp/articles/view/87431

>堤防やダムをはじめとする防災インフラの多くは現在では老朽化し、増大する自然災害に対応しきれていません。人口減少社会に突入した日本では、これまで通り防災インフラの維持管理、更新、さらには増設していくことは困難と考えられます
>この状況に対する対応策として期待されているのが、生態系を利用した防災・減災(Ecosystem Based Disaster Risk Reduction:Eco-DRR)という考え方
>ダムや堤防を始めとした人工物は定期的なメンテナンスが必要ですが、生態系、すなわち自然環境は自立して維持できるシステム

>水田の立地条件には、累積流量: Flow Accumulation(FA)という地形パラメータを利用しました。この値は、地表面における水の流れをシミュレートして算出するもので、理論的には流域内でこの値が最も高くなる場所が河川流路となるもの
>FAが高い地表を流れる水を貯めやすい地形条件下に水田が立地している市町村では、洪水の発生頻度、土石流、地すべりの発生が少ないことが示されました。地表を流れる水を貯めやすい場所は、過去には氾濫原湿地をはじめとする自然湿地であった可能性が高い場所
>生態系は、人間が開発する前に近い状態で利用することで、その生態系がもともと持っている機能:生態系機能が強く発揮されることを示唆します

 過去の統計情報を元に、水田の持つ洪水抑止能力をコンピュータシミュレーションした結果の論文です。

 水田という形で人工物になっていても、元の自然が持つ自然の特性が防災に活かされている、という興味深い内容です。
 開発に当たっても自然特性を考慮する、という事は20世紀末から既に一部で行われてきた事ではありますが、従来は景観や動植物保護と言った観点から実施する事が殆どでした。

 この研究からは、防災上でも自然特性を利用する事の重要性が示されると共に、人の手が入っても必ずしも自然の持つ力が失われるわけではない、という両方の見知が得られると思います。


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