バイオマス資源からアミンを直接合成できる新触媒 -再生可能資源からのポリマー原料・医農薬中間体製造に期待【日本の研究.com】


【プレスリリース】バイオマス資源からアミンを直接合成できる新触媒 -再生可能資源からのポリマー原料・医農薬中間体製造に期待-
東京工業大学~日本の研究.com
https://research-er.jp/articles/view/92150

>【要点】
>様々なアルコール原料から第一級アミンを直接合成する固体触媒を開発
>ルテニウム粒子の電子的チューニングによる高機能化の実現
>バイオマス由来の化合物から高付加価値ポリマー原料の合成に成功
>アルコールから得られるカルボニル化合物がアミン合成の出発原料としてよく用いられており、アルコールからアミンを直接合成できる新しい触媒の開発が望まれていた。これまでに報告されているルテニウム触媒では、高い反応温度や本来は必要のない水素の添加が必要であるという問題点があった。今回の研究では電子的調整(電子チューニング)を行ったルテニウム触媒を開発することで、低い反応温度で様々なアルコールから水素の添加を必要としないアミンの直接合成に成功した。

>●研究の背景
>第一級アミンは、医農薬品や機能性材料の合成中間体として広範に用いられている。したがって容易に入手可能な原料を用いて、有害な副生成物を生み出さない第一級アミン合成を開発することには大きな価値がある。原教授らの研究グループはカルボニル化合物を出発原料とし、水素とアンモニアを用いる還元的アミノ化反応により、様々なアミンを合成できる触媒を開発しており、これまでに発表をしている
>しかし、カルボニル化合物はアルコールを変換して得る必要があり、アンモニアとアルコールの反応により第一級アミンを触媒的に合成できれば、目的生成物以外に副生するのは無害の水のみとなり、環境調和性と原子効率に優れた合成法となる。
>近年では、化石資源の使用削減を目的としてバイオマス由来の原料を用いた変換反応の開発が進められており、バイオマス由来化合物の中には多くのアルコール類が含まれていることから、バイオマス由来アルコールから高付加価値な第一級アミンを合成する触媒の開発は、持続可能な社会の構築に貢献することが可能である(図1)。
>一例を挙げると、合成繊維として広く用いられているナイロンの原料であるヘキサメチレンジアミンは、石油精製の副産物であるブタジエンを有害な青酸(HCN)との反応によりアジポニトリルへと誘導し、その後、水素化することにより合成されている。アルコールから第一級アミンを合成することができれば、バイオマスから誘導できる

>●今後の展開
>今回開発した触媒は、アルコール類からの第一級アミン合成を効率化することが可能になることから、工業的な利用に向けた道が開けたといえる。さらにバイオマス変換による高付加価値化にも展開することが可能である。
>今回の研究では、金属ヒドリド種の電子的チューニングにより触媒活性を大きく変化させることが可能なことを明らかとした。金属ヒドリド種は有機化合物との間で水素の受け渡しをする際の鍵となる化学種であることから、水素分子を利用する反応(水素化反応)に応用できるというだけでなく、有機ケミカルハイドライド法の触媒設計にも応用することが期待できる。
>【用語説明】
>(1)第一級アミン:
>アンモニア(NH3)の水素原子1個を炭化水素基または芳香族原子団で置換した化合物。
>(2)有機ケミカルハイドライド法:
>水素は爆発性の気体のため、そのまま大規模に貯蔵輸送をする場合は、潜在的なリスクの高い物質である。安全に貯蔵輸送するため、トルエンなどの芳香族化合物を水素の入れ物(キャリア)として用いる手法。芳香族化合物の水素化(水素貯蔵反応)と脱水素反応(水素発生反応)からなる
>(3)Borrowing
>Hydrogen:
>有機化合物の酸化(脱水素)と還元(水素化)を一つの反応過程で行い、より複雑な構造の化合物を合成する手法。触媒と有機化合物の間での水素の受け渡しにより達成されることからBorrowing
>Hydrogenと名付けられた。
>(4)ルテニウムヒドリド種:
>ルテニウムとマイナスの電荷をもつ水素イオン(ヒドリド)が結合した化学種
>(5)アラミド樹脂:
>アミド結合(-C
>-N)によって多数のモノマーが結合してできたポリマーのうち、芳香族アミンをモノマーとして使用したもの。高耐熱性・高強度のエンジニアリングプラスチックであり、その高い引っ張り
>強度や耐刃性から、ケブラー®に代表されるように防弾チョッキやヘルメットなどに利用される。


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