「コロナ禍でのオリンピック開催は現実的でない」 尾崎正峰・一橋大教授
毎日新聞2021年2月5日 08時00分
https://mainichi.jp/articles/20210204/k00/00m/040/335000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20210205
>社会金志尚五輪をどうする東京都
>「震災からの復興を世界に発信する」だの「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しに」だの、東京五輪の「大義名分」がころころ変わってきた東日本大震災もコロナ禍も東京が誘致活動に乗り出した時点ではいずれもなかったものだでは、何のための五輪なのか開催に突き進むべきなのか地域スポーツ振興について長年研究し、五輪に関する論考も多い尾崎正峰・一橋大教授(スポーツ社会学)に聞いた【金志尚/統合デジタル取材センター】
>大会開催は「ムーブメント」の一つ
>――コロナ禍での五輪開催は現実的ですか
>◆テニスの全豪オープンに出場する錦織圭選手が現地のホテルで2週間の隔離を余儀なくされました大会側が用意したチャーター便の同乗者から新型コロナの陽性反応が出たためですが、このケースが現状をよく表していると思います一つの競技で出場者数が限られる大会ですら、このありさまです競技数も出場者数も桁違いに多い五輪では、たとえ無観客で開催したとしてもリスクは大きいと考えるのが自然ではないでしょうか
>今のこの状況を考えれば、大会開催に固執すべきではありません五輪憲章が掲げる理念にも反するのではないかと考えています
>――五輪の理念にも反すると
>◆五輪憲章にも記載がありますが、オリンピズム(五輪精神)という言葉がありますこれはスポーツを通じて世界の平和や安定、あるいは差別を無くすことを目指していく、そうした姿勢を意味していますオリンピックムーブメント(五輪精神を広める運動)はこのオリンピズムを広げていく活動全般のことを指し、何も大会開催だけを表すものではありません五輪憲章ではさまざまな活動を4年間かけて行うとされ、大会はその中の一つとして1年目に開くよう定められているに過ぎませんコロナ禍の今、大会だけに固執するのは、オリンピズムあるいはオリンピックムーブメントに反すると言っていいと、私は思います
>繰り返された「受け狙い」の理念
>――東京五輪の理念として国は「復興五輪」を掲げてきましたが、ここに来て菅義偉首相は「コロナに打ち勝った証し」という新たな大義名分を打ち出しています
>◆東京は石原慎太郎さんが知事だった2005年ごろから誘致活動に乗り出しましたが、「なぜ東京で2度目の五輪なのか」という理念がはっきりしていませんでした結局16年大会の開催都市争いではリオデジャネイロ(ブラジル)に敗れたのですが、これで終わるのかなと思ったらもう1回挑戦することになったその後の国などの動きを見ていると、俗な言い方になってしまいますが、「受け狙い」に走ってきたように思います
>東日本大震災や福島第1原発事故から復興した姿を世界に発信するのだと当時の安倍晋三首相などはこう説明していましたもちろん、五輪開催を力に東北の復興を一段と前に進める、復興に道筋を付ける思いが本当にあったとすれば、立派な理念だと思いますところが実際は…
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>「公衆衛生の論理無視」 豪の疫学専門家、東京五輪に懸念 森氏発言も「旧態依然」
>WHO、森氏の五輪「やる」発言に「事実を考慮した決断」促す
>「辞任せず」「Moriresign拡散」 海外メディアは森氏会見をどう伝えた
>「失言・暴言ではなく無知蒙昧」 森氏の女性蔑視発言に危機管理専門家が指弾
>質問を遮り、胸を張り、徐々に不機嫌に… 森喜朗氏「逆ギレ会見」の一部始終
>合同記者会見をするオリンピック委員会のバッハ会長(左)と東京2020組織委員会の森喜朗会長=東京都中央区で2020年11月16日(代表撮影)
>合同記者会見をするオリンピック委員会のバッハ会長(左)と東京2020組織委員会の森喜朗会長=東京都中央区で2020年11月16日(代表撮影)
>衆院予算委員会で質問に答える菅義偉首相(手前)奥左は橋本聖子五輪担当相=国会内で2021年1月26日午前9時43分、竹内幹撮影