新開発の脱塩膜で海水淡水化が効率的に-神戸大学【日本の研究.com】

海水から淡水をつくる高性能な膜を開発 ~ 2次元ナノチャネルを有するナノシート積層脱塩膜 ~
プレスリリース 掲載日:2020.12.24
神戸大学

日本の研究.com 2020年11月18日
https://research-er.jp/articles/view/95312

>脱塩膜は、海水から淡水を作り出すことができる材料です。世界的な水資源の不足の解決のため、現在実用されている脱塩膜よりも透水速度が速く、脱塩性能に優れる脱塩膜の開発が、さらに高効率で省エネルギーな海水淡水化※3の実現のために求められています。
>本研究では、酸化グラフェン※4ナノシートと呼ばれる2次元ナノ材料を、化学的な還元処理※5を施した後に、多孔膜上に積層することで、約50ナノメートル(1ミリメートルの1/
>)の厚みを有する脱塩膜を開発しました。開発した脱塩膜は、ナノシート同士の間隔や、ナノシート表面の電荷が制御されており、高性能な脱塩処理が可能です。将来的には新しい脱塩膜としての実用化や応用が期待されます。

>人口は年々増え続けています。そのため、数年後には世界の人口の2/3が水不足になるという予測もあります。この世界的な水不足は、人類が直面している最も重大な問題の一つです。そのため、地球上に大量に存在する海水を淡水化することで水資源を得る技術はとても重要です。
>しかしながら、従来の海水淡水化法である蒸発法では、海水を蒸発させて塩分を取り除くため、大量のエネルギーを消費します。一方で、膜分離法は海水から水だけをろ過し、塩分を取り除くことで淡水を得ることができる省エネルギーな方法です。
膜を用いた海水淡水化法は既に実用化されていますが、これまでの脱塩膜の透水速度と塩分除去性能にはトレードオフの関係があります。そのトレードオフを打破し、より高効率な海水淡水化を可能にするためには、新規の材料を用いた革新的な脱塩膜の開発が不可欠です。

>本研究チームは、炭素原子程度の厚みの2次元炭素材料を用い、それを積層することで高性能な脱塩膜を開発しました。使用した2次元材料は、化学的な還元処理を施すことによりπ電子共役系が付与された酸化グラフェンナノシートです。そのナノシートを、荷電官能基とπ電子共役系の両方を有するポルフィリン由来の平面構造分子とともに、多孔膜上に積層することにより、約50ナノメートルの厚さの超薄脱塩機能層を形成しました(図1)。
>形成された超薄脱塩機能層はナノシート同士の間隔(ナノチャネル)が1ナノメートル以下に制御されており、高いイオン阻止性能を示しました。また、その超薄脱塩機能層を有するナノシート積層膜は、ナノシート間のπ-π相互作用により水中でもナノチャネル間隔が安定に維持されるため、長期間使用することが可能です。
>開発したナノシート積層膜内のイオンの輸送は、ナノシート表面の静電反発によって効果的に抑制されていることを明らかにしました(図2)。この静電反発は、ナノチャネルの幅が最適に制御されたときに大きな効果を発揮します。本研究チームが用いたナノシート材料は、化学的還元処理の度合いやポルフィリン由来の平面分子の導入率を制御することで、そのナノチャネルの幅を制御できます。

>今回の研究で開発した2次元ナノシート積層膜の作製手法は、酸化グラフェンナノシートの還元度合いと平面構造を有する化合物の導入率を制御することで、ナノシート間の間隔とイオンの静電反発効果を制御できるため、海水淡水化用の脱塩膜をはじめとし、様々な電解質分離膜の作製への応用が期待できます。
>分離膜を用いた省エネルギーな脱塩技術は、水不足の解消に不可欠な技術で、地球規模の水資源枯渇問題の解決への貢献が期待されています。今後は、開発した膜の実用化に向けて、更なる高性能化を進めます。

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