日本地下の3次元地震波異方性構造を解明 ―プレート変形・マントル対流・地震火山の理解に重要な手がかり―
東北大学
日本の研究.comプレスリリース 掲載日:2021.01.21
https://research-er.jp/articles/view/95873
>地球内部の岩石には、「地震波速度異方性」という性質があります。地震波の伝播する方向によって地震波の伝播速度が異なるという物理性質で、地球内部岩石の変形、地殻の応力場、およびマントル対流のパターンなどを反映していると考えられています。
>東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センターの趙大鵬教授とWang博士PD研究員、現在は中国南方科技大学
助教は、従来の地震波トモグラフィー法注2を改良し、日本列島下の精確な3次元地震波速度異方性構造を明らかにしました。
これにより、日本海溝から日本列島下に沈み込んでいる太平洋プレートおよびその周りのマントルにおける詳細な3次元地震波速度異方性構造を解明し、太平洋プレートの沈み込み、ならびに、太平洋プレートそれ自体の変形が日本列島下のマントル対流のパターンを支配することがわかりました。
>日本海溝から日本列島下に斜めに沈み込んでいる太平洋プレートスラブとも呼びますは、日本の地下に存在する最大の構造異常体です。スラブの沈み込みによって、地殻の応力場の変化やマントル対流が起こるので、地震と火山の根本的な成因と言えます。
これまで多くの研究では、「地震波トモグラフィー」と呼ばれる手法で地震波データを解析し、日本地下の 3 次元速度構造を調べてきました。
しかし、従来型のこの手法で求めた結果は、地下の「静的」な構造しか反映できず、地殻の応力場やマントル対流のような「動的」な情報を読み取れません。
一方、地球内部の岩石には、「地震波速度異方性」という性質があります。地震波の伝播する方向によって地震波の伝播速度が異なるという物理性質で、地球内部岩石の変形、地殻の応力場、およびマントル対流のパターンなどを反映していると考えられています。
そこで、従来型の地震波トモグラフィー法を改良して、今まで考慮に入れていなかった地震波速度異方性も解析対象に加えると、地下の 3
次元的な「静的」構造のみでなく、マントル対流などの「動的」な情報も抽出できます。
>太平洋プレートの沈み込みとその変形は日本地下のマントル対流のパターンを支配します。
>これまで多くの研究で報告されている前弧域大まかには日本列島の太平洋側における海溝に平行する異方性は、太平洋プレートの沈み込みに伴う変形と緊密な関係があります。
>スラブの下側のマントルにも顕著な地震波異方性が存在し、スラブの沈み込みと弯曲に関係すると推測されます。
>今後このような研究を世界の他の沈み込み帯地域に展開すれば、地球内部の
3次元構造とダイナミクスおよび地震・火山成因の理解が大幅に進展すると期待されます。
>本研究は文科省科研費課題番号19H01996の支援を受けて行われました。また、東北大学災害科学研究拠点からの研究費の支援を受けました。